「初めての方へ」のページ文言を、去年の秋に書き直してから、また同じ数行を直したり戻したりしている夜だった。パソコンの画面には「ご不安な点があれば」という一文が浮かんでいて、これでいいのか、いや硬すぎるだろうか、と打っては消してを繰り返していた。
三年前、初めてお電話でお話しした方のことを、こういう夜はよく思い出す。約束の時間から五分ほど遅れて、少し息を切らしながらかけてくださった方で、開口一番「変なことを言ってしまったらすみません」とおっしゃった。こちらは特に身構えていなかったのだけれど、その一言だけで、この方がどれだけ緊張しながら電話の前に座っていてくださったのかが伝わってきた。
身構えなくてもいい、ということ
実際にお話がはじまると、その方は特別なことなど何も話していなかった。最近よく眠れないこと、なんとなく気持ちが落ち着かないこと。ただそれだけを、ぽつぽつと話してくださった。四十分ほどのお時間の終わりには、声の張りが最初とはずいぶん違っていて、電話を切る前に「思っていたより、普通に話せました」と笑っておられた。
その「普通に話せました」という一言が、わたしにとってはずっと大事な指標になっている。初めてのセッションで身構えてしまう方の多くは、うまく話さなければ、とか、順序立てて説明しなければ、と思っておられる印象がある。けれど実際にお預かりする時間の中身は、たいてい行き当たりばったりの雑談に近いところがある。決まった台本があるわけではなく、その日その日で、話す内容も順番も変わっていく。
書き直していたページの一文も、結局は「うまく話そうとせずに、そのままいらしてください」という言葉に落ち着いた。硬すぎず、かといって軽くなりすぎない一文を探すのに、今夜もまた小一時間ほどかかってしまったけれど、これで少しは肩の力を抜いてもらえるだろうか、と思いながら保存ボタンを押した。
画面を閉じる前に、三年前のあの方は今どうしていらっしゃるだろう、と少しだけ考えた。窓の外はもうすっかり暗くて、机の上のろうそくだけが静かに揺れていた。
これから初めてお申し込みくださる方にも、どうかそのままの気持ちでいらしていただけたらと思います。
